トランプ氏、機密文書保持の起訴が棄却される。検察官の任命が違憲と連邦地裁が判断

ドナルド・トランプ前大統領

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アメリカ・フロリダ州の連邦地裁は7月15日、トランプ前大統領が機密文書保持していた事件での起訴を棄却した。

この事件で、トランプ氏は大統領時代の機密文書をフロリダ州の自宅で違法に保持し、FBIによる回収を妨害しようとした罪で起訴されていた。

この起訴について、フロリダ連邦地裁のキャノン判事は、事件を捜査したジャック・スミス特別検察官の任命の仕方が違憲だとして、起訴を棄却した。

【画像】トイレにも置かれていた。トランプ氏のフロリダ邸宅で見つかった機密文書

棄却の理由

スミス氏は、ガーランド連邦司法長官に特別検察官に任命され、トランプ氏の機密文書保持事件の捜査や起訴の指揮をとってきた。

これに対し、キャノン判事は「憲法では、議会に特別検察官の任命権限が与えられている」と指摘。

スミス特別検察官が、議会を通さずガーランド司法長官に任命されたことを違憲だと判断して、起訴を棄却した。

一方、キャノン判事はトランプ氏の機密文書保持の違法性については明言しなかった。

機密文書保持事件の判事を務めたアイリーン・キャノン判事(2020年7月29日撮影)

この判決に対し、スミス特別検察官は棄却を不服として上訴する意向を示している。

スミス特別検察官の広報担当を務めるピーター・カー氏は、「これまですべての裁判所が、司法長官には特別検察官を任命する権限が法律で与えられていると判断してきた。今回の棄却はその一致した判断から外れたものだ」と批判している。

検察側の上訴が認められれば、トランプ氏は機密文書の問題で再び起訴されることになる。ただし、仮に上訴が認められた場合でも、公判が11月の大統領選挙前に開始されることはほぼあり得ない。

トランプ氏は自身のソーシャルメディアで棄却を歓迎し、自身に対するすべての訴訟が取り下げられるべきだと主張した。

大統領の免責特権を認めた最高裁の判断

アメリカ連邦最高裁は7月、「大統領は公的な行動についての責任が免責される」という判断を示した

この判決の多数意見の中で、クラレンス・トーマス最高裁判事はスミス特別検察官の任命の合法性に疑問を呈し、「起訴はアメリカ国民から正式に権限を与えられた人物によって行なわれなければならない」と述べていた。

キャノン判事は機密文書保持事件の棄却決定の中で、トーマス最高裁判事の意見を複数回引用している。

判決は、共和党から歓迎される一方で、民主党からは非難の声が上がっている。

共和党のマイク・ジョンソン下院議長は、「アメリカと法の支配にとって良いニュース」で、国を一つにするために重要な一歩だと述べた。

一方、民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、「息を呑むほど見当違いの判決だ」と批判。

「長年受け入れられてきた慣行や数々の判例に反している」として、上訴すべきだと主張している。

憲法学者であるブレナン司法センターのマイケル・ウォルドマン代表も、「キャノン判事は訴訟をドナルド・トランプの弁護団のメンバーのように扱った」とニューヨーク・タイムズにコメントした。

キャノン判事は2020年に当時大統領だったトランプ氏によって任命された。

ウォルドマン氏は訴訟のペースが遅かったことも指摘して、11月の大統領選挙前に訴訟が行われないようにするためだと批判している。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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