【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。

テロリズムに対する意識と人権意識の低さ

2024年7月14日の『サンデーモーニング』は、トランプ前大統領銃撃事件を速報しました。そこには、恐ろしいまでのテロリズムに対する意識の低さと人権意識の低さが垣間見られました。

膳場貴子氏:まずはたった今入ってきた速報です。米国のトランプ前大統領の選挙集会で発砲音です。

駒田健吾アナ:米国のトランプ前大統領が選挙集会を行っていた会場で複数回の十の発砲音がしました。トランプ氏は演説を中断し、避難しました。日本時間の午前7時11分ごろの映像です。
東部ペンシルヴェニア州で、トランプ前大統領が選挙集会を開き、演説を行っていたところ、突然複数回の銃の発砲音がしました。トランプ氏は身をかがめ、駆け寄った警備担当者のシークレット・サーヴィスに身を守られながら車に逃げ込みました。今、右腕を上げているのがわかります。
そして避難する際ですが、トランプ氏の右耳から口にかけて血が出ているのが映像から確認できますが、詳しいことはわかっていません。複数の発砲音があり、トランプ氏が負傷した模様と見られます。

膳場貴子氏:まだ怪我の程度など情報が入っていませんけれど、映像から見る限りでは自力で歩いていますし、足取りもしっかりしている。命に別状はなさそうですね。
これ藪中さんに聞いていきたいのですけれども、選挙戦中にこういうことが起きた。まぁ、民主主義の根幹である選挙を暴力で妨害してくるのは許せないことではありますけれども、どういった影響がこの後に考えられますかね。

藪中三十二氏:衝撃のニュース、衝撃の映像ですけど、勿論何事もないことというかね、ああやってもうむしろ拳を上げてやっていましたから、命に別条がないということは間違いないと思います。
これからの影響ですけれど、本来、皮肉なことなんですよ。銃規制に反対というトランプさんの立場で、バイデンさんは、銃規制は必要だと言ってましたけど、そこでこういう事件が起きたと。
ただ、こうやって拳を上げて見せている姿は「俺は元気だぞ」と。むしろ、選挙戦から言うと、変な話ですけれど、これ有利に働く可能性はありますよね。

膳場貴子氏:これ凄くプラスのアピールにもなりかねないという感じがしますね。

藪中三十二氏:それを何回もこれをやってますからね。

膳場貴子氏:流れるでしょうね。え~え~。共和党トランプ陣営はこれで結束していくきっかけにもなる可能性が。はい。最新情報が入り次第、またお伝えしてまいります。

これは、膳場氏と藪中氏のテロリズムに対する意識の低さが非常によく表れているやり取りです。番組を通して、テロリズムに対する非難は「選挙を暴力で妨害してくるのは許せないことではありますけれども」の一言であり、それよりも彼らの関心が高いのは「どういった影響」がこの後に考えられるかです。

『サンデーモーニング』がいくらトランプ氏を嫌悪しているとしても、まずは民主主義を脅かす卑劣なテロリズムに対する非難を明確に宣言することが、公共の電波を独占的に利用しているテレビ放送の使命であると考えます。

膳場氏と藪中氏のやり取りを素直に聴けば、彼らが恐れていることは、テロリズムによる言論弾圧ではなく、テロリズムの被害者のトランプ氏が有利になることです。実際、膳場氏は、今回のテロリズムがトランプ陣営に対して「プラスのアピールにもなりかねない」という注意喚起を結論にしています。

『サンデーモーニング』がいくら美辞麗句を訴えたところで、所詮その本質は、気に入らない相手を叩くことが優先されます。「プラスのアピールにもなりかねない」という注意喚起は、命の危険をも顧みずに政治活動を行っている政治家の勇気と尊厳をバカにしたものであり、人権意識のカケラもない発言です。

テロリズムの被害者の人気を危惧する

番組はさらに不適切極まりない発言を繰り返していきます。

膳場貴子氏:さて、ここでトランプ氏襲撃のニュースでワシントンと中継が繋がっています。(中略)また新しい情報が入ったらお伝えしていただきたいのですが、え~、藪中さんどうでしょうかね。これをうけて選挙戦への影響というのは大きいかと思いますけれども。

藪中三十二氏:さっき、申し上げましたけれども、むしろあそこで拳を上げて「俺は元気だぞ」と。あの姿、あれはトランプ岩盤層だけでなく、同情と同時にトランプさんへの人気というのは少し高まるような感じは私はしますですね。

膳場貴子氏:う~ん。いろんなことがある米国大統領選ですが、トランプ氏の情報がまた入り次第、お伝えしてまいります。

このやり取りからも、国政選挙でテロリズムに斃れた被害者である安倍晋三総理の国葬を非難し、テロリストの目的を見事に達成させることに大貢献した『サンデーモーニング』の本性がわかります。

さらに発言は続きます。

膳場貴子氏:ここで演説中のトランプ氏が銃撃された事件について、ワシントンとあらためて中継が繋がっています。(中略)ありがとうございます。藪中さん何かありますか。

藪中三十二氏:これから共和党大会があるんですね。そこであらためてトランプさんが候補者として指名されることになるんですけれど、これでますますトランプさんは、むしろ「俺はやるぞ」と元気になると。

膳場貴子氏:勢いづいていくと。

ここでも、テロリズムよりもトランプ氏を警戒しています。そして、次のような新情報が入ります。

膳場貴子氏:トランプ氏が発砲で負傷を追ったニュースの速報がまた入ってきました。

駒田健吾アナ:米国メディアは、銃を発砲した人物は射殺されたと報じました。

『サンデーモーニング』はしばしば日本の死刑制度を非難しますが、世界のテロリズムにおいて、テロリストは、多くの場合、司法による裁判も受けられずに、警察によって射殺されてしまうのです。

●トランプ氏発砲、容疑者は「死亡」 聴衆にも犠牲か
https://www.sankei.com/article/20240714-U4EIK6T34NLDTHWV5D6FLLFP6U/

●ベルリンのトラック突入容疑者、ミラノで射殺 首相は法改正必要と - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/38425933

●銃乱射テロの容疑者、警察が射殺 フランス
https://www.cnn.co.jp/world/35130121.html

●ロンドン橋で襲撃、5人死傷 射殺された容疑者はテロ罪で有罪歴 - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/50611561

●独、極右テロやまず 水たばこバー また発砲:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/26356

●バイデン米大統領の殺害を予告した男性、FBIに射殺される ユタ州 - BBCニュース
https://bbc.com/japanese/66457782

『サンデーモーニング』が、テロリズムを真っ向から否定することよりも、テロリズムの被害者の人気を危惧する報道スタンスは、放送倫理上の大問題であると考えます。

蓮舫氏に対する批判は女性差別?

この日はどうしようもない発言が他にもありました。

安田菜津紀氏:例えば、石丸さんの動画によく見られるものとして、誰かに何かを言ってやったという構図がウケて、かたや何か女性候補が批判すると、「怖い」とか「キツイ」とか言われて、発言の内容とは違ったところで揶揄されていくというのは、それがすべてではないにしても、やはり女性差別だったらミソジニーも関係している面も私はあると思う

まず、安田氏のこのコメントにおける「女性候補」というのは蓮舫氏です。小池氏が「怖い」とか「キツイ」とか言われることは殆どありません。街頭演説において「やめろ!」の大合唱で演説を掻き消されても、演説妨害者を直接批判することはありませんでした。

さて、今回の都知事選で多くの女性が投票したのは小池百合子氏であり、蓮舫氏ではありません。蓮舫氏惨敗の要因は、人口の半数を占める女性をターゲットとしながら、女性からほとんど支持されなかったことです。

投票行動を見る限り、蓮舫氏が男性に嫌われているような傾向はありません。むしろ男性に人気がないのは小池百合子氏、女性に人気がないのは石丸氏です。

都知事選を通してのSNSやニュースサイトのコメント欄における蓮舫氏に対する批判は、脱法的な選挙運動・信憑性のない政策・他候補に対する人格攻撃・支援者の暴走の放置といった根拠に基づくものです。

さらに言えば、石丸氏の強い言葉も批判されていますし、蓮舫氏の強い言葉もウケています。

このような状況において、女性差別やミソジニーを蓮舫氏批判の要因とすることは、明らかな男性差別です。

あえて言えば、女性運動家が根拠なく女性差別・蔑視を根拠にして、特定の女性を無理やり擁護・称賛することこそ、女性差別・蔑視の元凶であり、一般女性にとっては本当に迷惑なことです。

沖縄は捨て石?

また、『サンデーモーニング』が旧態依然として繰り返しているのが、大衆を感情で操作する不合理な報道です。

膳場貴子氏:進む自衛隊の南西シフト、今年3月、沖縄本島で初めてうるま市に地対艦ミサイル部隊が配備されたのです。

膳場貴子氏(VTR):地域住民には十分な説明があったのでしょうか?

地域住民(VTR):いや、まったくないですね。無視されていました。

膳場貴子氏:今回配備されたのは12式地対艦誘導弾、射程200kmほどですが、将来的には中国本土も射程に入る1000kmに伸ばし、反撃能力として活用される可能性が指摘されています。

地域住民(VTR):真っ先にやられるのは沖縄。また捨て石にされる。沖縄が犠牲にされる。

論理的に言えば、真っ先にやられる場所に対して部隊を配備しない状態こそが捨て石の状態に他なりません。

実際、大東亜戦争時の沖縄がその状態にありました。沖縄戦の悲劇の素因は、日本の他地域から沖縄への軍隊の派遣や物資の供給が米軍によって阻止されたことです。

私事で言えば、戦時中に沖縄救援に向かうため祖父が乗っていた船も米軍の攻撃で沈没しました。紛れもない事実として、大東亜戦争では、沖縄県民以外の多くの人が沖縄県民を救援するために戦死しましたが、今では戦後教育を受けた一部沖縄県民から「なかったこと」にされているのです。

沖縄の基地問題では、左翼政治家・マスメディア・活動家が、美辞麗句を不当に振りかざすことで不合理な罪悪感を大衆に与えて操作する【感情的恐喝 emotional blackmail】を繰り返してきましたが、実際には自衛隊が沖縄でin situに機能することは、沖縄県民の安全に大きな利益をもたらします。

『サンデーモーニング』が、歪曲された戦後教育で実際の戦況を把握していない一部住民へのインタヴューを根拠に、自衛隊の配備に対して感情的に反対することは、沖縄県民の安全を低下させ、傍若無人な覇権国家の戦略に寄与する極めて無責任な行為です。そもそも中距離ミサイルによる核攻撃が可能な状況では、横須賀の住民も厚木の住民も福生の住民も沖縄と同様の脅威に晒されていることも忘れてはなりません。

6月16日の沖縄県議選でオール沖縄は惨敗しました。既に多くの沖縄県民は左翼の呪縛から解放されています。『サンデーモーニング』の欺瞞に気付くのも時間の問題であると考えられます。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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