『音楽の日』1時間に及ぶ濃密なダンス企画 BE:FIRST、Travis Japan、THE RAMPAGE、ME:I……18組の熱演

7月13日に『音楽の日2024』(TBS系)が放送された。中でも注目を集めたのが、昨年に続いて行われたグループや事務所の垣根を越えたダンスコラボ企画だ。「垣根は越えた!今度はバトルだ!」と題して“ダンスバトル”に焦点を当て、語り継がれるであろう数々のハイライトを残した濃密な企画を振り返る。

ほとんどが謎に包まれたバトルの火蓋を切って落としたのは、各グループ1名ずつ選抜された18名によるオープニング。「Drop (feat. Fatman Scoop)」(ティンバランド&マグー)に乗せてユニットごとのダンスコラボを見せていく。中でも、RIN(新しい学校のリーダーズ)、RAN(ME:I)、八木愛月(AKB48研究生)、井上和(乃木坂46)といったガールズグループの面々が加わったことは、昨年と一味違うポイントだ。

INIとTHE RAMPAGEの1stバトルは「組み技対決」。INIは「勝手にシンドバッド」(サザンオールスターズ)に合わせて、“INI”の文字形に並ぶタットダンスで始まり〈今 何時?〉のパートから時計を模したフォーメーションを組むなど楽曲イメージにぴったりのショーを展開する。続くTHE RAMPAGEは「宿命」(Official髭男dism)に合わせて大人数ならではのフォーメーションを細かく組み合わせていく。武知海青を中心としたジャズダンスで楽曲イメージを体現しながら華麗にフロアを暴れ回った。

2ndバトルは「YOASOBI対決」。Da-iCEは「怪物」(YOASOBI)の歌詞をストレートに振りに落としつつ、大野雄大の手のひらにサイコロ(=ダイス)が描かれていたり、Da-iCEの最新曲「I wonder」などの振り付けを随所に散りばめたりと、彼ららしい遊び心が満載。「夜に駆ける」(YOASOBI)を用いたTOMORROW X TOGETHERは、サビでバレエのカブリオールのような動きなど高度な技を取り入れたり、自分たちの楽曲の振り付けを入れ込みつつ、構成を瞬時に切り替えたりしながら、ハイレベルなダンススキルを世に知らせた。

3rdバトルはME:I vs FANTASTICSの「アニソン対決」。オールブラックの衣装に身を包んだME:Iは「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)で、メンバーそれぞれの見せ場が輝くしなやかさと力強さが共存したステージを披露した。「Get Wild」(TM NETWORK)でFANTASTICSが披露したのはニュージャックスウィングなどLDHらしいステップダンスを取り入れた構成。澤本夏輝と堀夏喜の“夏夏”コンビのペアダンスや、80~90年代に合わせたクラシックなスタイリング、俳優としても活躍する佐藤大樹の表現力を魅せたラストも圧巻だった。

4thバトルは「帽子対決」。三代目J SOUL BROTHERSは「come again」(m-flo)のネオ・シティポップサウンドに乗せ、揃いのハットを用いた大人の装いで2stepビートを華麗に刻んだ。DA PUMPによる「のびしろ」(Creepy Nuts)は、こちらも揃いのキャップがキーアイテム。こちらではクランプダンスやアイソレーションだけでなく、「Choo Choo TRAIN」(EXILE)でお馴染みのロールダンスや「R.Y.U.S.E.I.」(三代目 J SOUL BROTHERS)のランニングマンなど、三代目 J SOUL BROTHERSを意識した振り付けも取り入れられ、NAOTOからも驚きの声が上がった

ハーフタイムショーの1on1ダンスバトルには選抜メンバー8名が出場。ヒップホップ対決では、日本クランプダンス界のパイオニア・Twiggz “JUN”を師に持つクランパー・GENERATIONS 佐野玲於と、グループでヒップホップの発祥地アメリカに留学し経験を積んだTravis Japan 中村海人が、本気バトル。ロックダンス対決では超特急のアロハと&TEAMのTAKIが、フロアを巧みに使ったダンスを見せた。

フリースタイル対決では、「HIPHOP INTERNATIONAL 2018」日本代表も務めたDA PUMP・YORIと、ヲタ芸すらダンスにする生粋のエンターテイナーであるSnow Man 佐久間大介が観衆を盛り上げる。最終ラウンドのワールド対決は、実力者揃いのLDHでも一目置かれる“ダンスの申し子”ことFANTASTICS・世界と、ヒップホップダンス世界大会で4度の優勝経験があるBE:FIRST・SOTA。ハイレベルな音取りと超絶技巧を繰り出した、笑いが溢れるほど人間離れしたバトルには、佐野が思わず「やばいやばい」と興奮する様子もカメラに収められた。

1on1ダンスから息をつく暇もなくハーフタイム後半を熱狂させたのは、次世代ホープによるコラボダンスステージ。LDHの新星でパフォーマー7人全員が日本発のプロダンスリーグ、Dリーグの選手であるTHE JET BOY BANGERZと、BE:FIRSTやMAZZELの所属事務所の練習生であるBMSG TRAINEEによる、年齢も経歴も異なる異色のコラボだ。特に後者には先日初公開されたばかりの練習生もいたのだが、歴の違いを微塵も感じさせず、底上げされる日本のエンタメ界の未来を明るく照らすものだった。

後半も豪華ダンスバトルが続いた。「マイケル・ジャクソン対決」に挑んだJO1とTravis Japanは、「BEAT IT」と「BAD」でゼロ・グラヴィティや決めポーズなど特徴的なMJイズムを再現。GENERATIONSと新しい学校のリーダーズは「昭和の名曲対決」で「Romanticが止まらない」(C-C-B)と「恋のダイヤル6700」(フィンガー5)を選曲し、個性炸裂の振り付けで楽しませた。「布対決」では、青のグラデーションが鮮やかな扇子のような小道具で「アゲハ蝶」(ポルノグラフィティ)を踊ったAKB48・SKE48・NMB48・HKT48・NGT48・STU48のメンバーで構成されたAKB48チームと、乃木坂46、櫻坂46、日向坂46を表すような淡い3色の布を用いて「白日」(King Gnu)を踊った坂道グループのコントラストが見る者を世界観へと引き込む。超特急と&TEAMの「イス対決」では、椅子を使って「魅せる」構成を作った超特急と、ベンチを滑り台のように見立てて爽やかにストーリー性を含ませた&TEAMのアイディアの違いも楽しむことができたのではないだろうか。

バトルのラストを飾ったのは、BE:FIRST vs Snow Manの「映画主題歌対決」。BE:FIRSTは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』テーマソングの「One Last Kiss」(宇多田ヒカル)で、ジャズダンスを得意とするRYUHEIを中心にそれまでと打って変わって儚い世界を生み出し、数分前まで歓声がこだましていたスタジオを静寂に包み込むほど空気をつくり変えた。一方、Snow Manからは佐久間大介、岩本照、宮舘涼太が参戦し、『ロッキー3』主題歌の「EYE OF THE TIGER」(Survivor)でワイルドかつクールにパフォーマンス。体幹や脚力が肝となる難易度の高い振付だが、バク転からの腕立て伏せまで見事にこなし、会場を再び歓声で満たした。

フィナーレでは選抜8名によるドリームチームが、今回も本企画のプロデュースと振付を担当したs**t kingzとともに、10日にリリースされたばかりの「MORECHAU」(s**t kingz)でダンスコラボ。最後には、「Uptown Funk (feat. Bruno Mars)」(マーク・ロンソン)をBGMに入れ替わりの激しいコラボでバトンを繋ぎ、1時間に及ぶダンス企画は総勢125名の大フィナーレで幕を下ろした。

「ダンスバトル」と銘打ちながらも、対立するのではなくダンスを愛する者たちがその魂をぶつけ合い高め合う――企画の本質がそこにあることは明白だ。世界に通用するダンスレベルの高さはもちろん、何よりもダンスという世界共通言語を通じて生まれる感動や共鳴が私たちの心を動かし、アーティストだけでなくそれを見た人々の交流をも生んでいくことを再確認した企画だった。

(文=風間珠妃)

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