集団[ライブレポート]残虐な轟音の中で可憐に歌い踊る少女たちのデビュー「超選ばれし人たちに始まりを見届けてもらえて嬉しい」

集団[ライブレポート]残虐な轟音の中で可憐に歌い踊る少女たちのデビュー「超選ばれし人たちに始まりを見届けてもらえて嬉しい」

NARASAKI&小倉ヲージプロデュースの新アイドルグループ ・集団が、6月29日(土)に渋谷・club asiaにてデビューライブ<集団GIG Vol.1>を開催した。

NARASAKIを中心にしたバンドが炸裂させた激烈轟音を武器に、翠叶かぅん、武者小路朱菜、由已むぎ、卯花ういの4名のメンバーは、それぞれが個性あふれるパフォーマンスを披露。満員の会場で圧倒的な熱狂を生み出した。

本記事では、グループとしてのポテンシャルの大きさをまざまざと見せつけた同公演の模様をお伝えする。

取材&文:冬将軍

撮影:宇佐美亮

レトロでファニーなBGMが流れる中、登場した4人の少女。その表情は真剣でどこか硬いようにも見えた、と思ったのも束の間、猛り狂うバンドの轟音が襲い掛かる。乱れ撃たれるブラストビートの中で《嘘! 誤情報! 誤情報!》と叫び出す4人。“こ、これは……”ステージ上でくり広げられていることが理解できぬまま1曲目「パンダちゃん」は終わってしまった……というのが正直なところだ。機材の不具合いか、NARASAKI(Gt)がギターをチェンジしておもむろに始まった「チェンジマイワールド」。4人の少女声とバンドの轟音アンサンブルが交互に鳴り響く。なんとも奇天烈な楽曲ではあるが、そのステージの様相からグループの全貌が明瞭になってくる。プロデューサー2人が語っていた“残虐な音が揺れているのに、歌ってる子たちはお構いなしで可愛い”というライブ空間が眼前に広がっている。禍々しい電子音とスタスタとひたすらに刻まれる高速人力ビートの融合、「ブリキのコア」と題された3曲目。ステージバックに悠然と構えるバンドがやっていることは激しくすさまじいが、フロント側の4人の少女たちはお互い手を取り合い、可憐なステップを踏んでいく……エクストリームでグラインドするバンドを背に、歌い踊っているのは紛れもなくアイドルだ。4人の少女は全力でアイドルをしているのだ。

“呆気に取られた”という表現が正しいのかも知れない。気づけば3曲が終わっていた。それがNARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS、特撮)×小倉ヲージ(代代代、細胞彼女他プロデューサー)という奇才2人が手がけるアイドルのファーストインプレッションだった。プロデューサー2人のインタビュー、そしてメンバー4人のインタビューをした私ですらそんな印象であったのだから、フロアを埋め尽くしたオーディエンスの多くが度肝を抜かれたに違いない。

2024年6月29日、渋谷club asia。“集団”のデビューライブはこうして幕を開けた——。

“<集団GIG Vol.1>にお集まりのみなさん、初めまして、集団です!!”

武者小路朱菜の第一声からの自己紹介。ソールドアウトしたことに礼を述べる4人。ステージ上で起こっている出来事に、ただ呆然と立ち尽くすしかなかったフロアからメンバーの名を呼ぶ声が上がる。嬉しそうな表情を見せる4人。“緊張しすぎて12時間寝た”という、由已むぎと、“1時間おきに目覚めた”という、翠叶かぅん。そうしたアイドルらしいゆるいやりとりが、残虐な轟音の合間に休息を生む。会場は先ほどとは一変して和やかな空気に変わった。

武者小路朱菜<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)
由已むぎ<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)

チケットは即ソールドアウト。急遽追加チケットが抽選販売されるほどの注目度である。そんなオーディエンスに対し、“超選ばれし人たちに始まりの日を見届けてもらえて嬉しい”と朱菜。次に投下されたのは「権力と美学」。MCを挟み、ワンクッション置いたことでステージ上の4人は先ほどよりもリラックスした表情を見せながらパフォーマンスを魅せていく。

おどろおどろしいシーケンスに重なっていく暴力的なビート。Shuhei Kamada(Dr/Imperial Circus Dead Decadence)の容赦ないドラミングに被さる大谷明久(Ba/Marmalade butcher)のグルーヴが、音源の無機的な印象とは異なる躍動を生み、NARASAKIの耳をつんざくようなディストーションの壁が唯一無二の音像空間を創り出す。そこに小倉らしい開放的で音符の大きいメロディが突き抜けていくのである。

<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)

残虐な轟音の中で、バンド経験のない少女たちがどう立ち向かっていくのか。バンドの生音に負けてしまうのではないかという懸念もあったが、そんなことはなかった。バンド経験がないからこそ、怖いもの知らずなところがあるのかもしれない。メンバーのうち1人だけアイドル経験がなく、初めてのアイドルライブ、初めてのお客さんの顔を見て“美しい”と表現した、卯花ういの度量の大きさを感じるパフォーマンス。反対に4人の中で1番アイドルオーラ全開の立ち振る舞いで愛嬌を振り撒く、むぎ。小柄ながらもその四肢の動かし方は誰よりも大きく、キレのある動きとキュートな歌声で魅了する、かぅん。そして、ロックスピリッツを感じさせるボーカルと安定感のある動きで4人を引っ張っていく、朱菜。ライブが進むにつれ、4人それぞれの個性が明確になっていく。

卯花うい<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)
翠叶かぅん<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)

小倉らしい煌びやかなシンセサウンドとNARASAKIの流麗なフレーズが交錯し、独自性のあるポップセンスに塗れた「タイムスリップ」。そしてタイトルどおりの“燦爛”としたメロディに、ミュージカルなパートが挿入されるという、グループの振り幅をしっかり魅せつけた「燦爛」。ライブ後に発表されたセットリストのクレジットによれば、同曲のコンテンポラリーダンスを感じさせる優雅なコレオグラフィを手掛けたのは、間宮まに。さらに作詞は月丘憐という、古くからのライブアイドルファンを喜ばせる人物が制作に関わっていたことを付け加えておきたい。このセクションは“Dビートと2ビート、ブラストビートを多用するアイドル”というマニアライクな集団の構想ながらも、NARASAKIと小倉のキャッチーなメロディメイカーとしての手腕とポップセンスを十二分に感じられるものであり、集団のアイドルグループとしての振り幅をしっかりと見せてくれた。

<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)

“まだまだ曲はいっぱいあるんですよ。みなさん最後までついて来れますか?”

朱菜の言葉からのラストスパートは「トカゲのパン屋さん」で口火を切った。言わずとしれた、BABYMETAL「ヘドバンギャー!!」「Catch me if you can」を手がけたEDOMETALとNARAMETAL(NARASAKI)コンビによる、極悪ヘヴィリフに超絶キャッチーなメロディが重なる破壊力抜群のキラーチューンである。伸び縮みするようなリズムに合わせて華麗に足を上げる振りも破壊力抜群であり、アイドルらしくオーディエンスを悩殺する。続いてはエモーショナルなメロディで強さを見せるような「ソレイユ」。間宮のコレオによるシアトリカルなダンスも相俟って、アッパーでストロングな印象を受けた。そして解放へ向かっていく「プリズム」へ。これからの集団の可能性を示唆する楽曲が続いた。

<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)

ラストナンバーはグッズで販売されていた、“悪霊退散”ステッカーの伏線回収。その名のとおりズバリの「悪霊退散」である。スラッシーなバンドの狂騒を背に、翳される4人の右手。フロアからも無数の右手が挙がり一体化する“悪・霊・退・散!”のコール。NARASAKIのスケールアウトしていくようなシュレッドギターソロも炸裂し、ボルテージはグイグイ高まっていく。ハイスピードな轟音をさらに掻き乱すように4人はステージを走り回り、怒涛のような集団のライブは終演を迎えた。

鳴り止まぬアンコールに迎えられ、再びステージに姿を現したバンドメンバーと集団の4人は再び「パンダちゃん」を披露。再び聴くそのナンバーは……乱れ撃たれるブラストビートの中でくり広げられていることが理解できぬまま終わってしまった。ああ、もう1度最初から観たい。これが集団なのだと。バンドは途轍もなく残虐で轟音でヘヴィで、それをバックにして歌い踊る4人の少女は自由に楽しげで、紛れもなく可憐で美しいアイドルだった。

次回も<集団GIG VOL.2>と題されたバンドセットでのワンマンライブである。この先、集団が創り上げていく世界がどのようなものになっていくのか、楽しみで仕方ない。

<集団GIG Vol.1>club asia(2024年6月29日)

<集団GIG Vol.1>

ライブインフォメーション

<集団GIG VOL.2>

日時:2024年7月23日(火)open 18:30 start 19:30

会場:新宿LOFT

チケット:¥2,500(+1D)

集団 -BAND SET-

<集団GIG VOL.3>

日時:2024年8月12日(月・祝)open18:15 start19:15

会場:味園ユニバース

集団 -BAND SET-

© JAPAN MUSIC NETWORK, Inc.