巨大農業商社「全農」で見た“食料争奪戦”  日本を脅かす中国の輸出規制&大量買い!

東京・大手町。ここに日本の農業を支える「全農」の拠点がある。世界中にネットワークを持ち、肥料の約5割、エサとなる飼料の約3割を調達する、いわば日本最大の農業商社だ。そこで行われる重要な会議にカメラが入った。

「食」の最前線で今、何が起きているのか?

JA全農・肥料原料課課長の谷山英一郎さんは、肥料買い付けの責任者だ。今、最も気がかりなのは、「りん安(あん)」の調達だという。

JA全農 肥料原料課課長 谷山英一郎さん:
「りん安は、非常に高値で推移しています。2020年(の指数)を100とすると、足元(5月時点)で200をまだ超えているような状況です」(谷山さん)

「りん安」は花や実のつきを良くする肥料の原料で、「塩化カリウム」(根の発育を良くする)や「尿素」(葉や茎を大きく育てる)と並び、現代の野菜作りに欠かせない。それらの重要資源を、日本はほぼ100%輸入に頼っていた。

JA全農職員:
「これが、りん安です」

案内された倉庫には、茶褐色で粒状のりん安が積み上げられていた。どこから運ばれてきたのかと尋ねると、「すべて中国」だという。

中国産のりん安は、輸入量の実に4分の3を占める。この3月まで中国が輸出規制を強化したことから、今後の動向が谷山さんたちの関心事だ。

中国が再び「輸出規制」する可能性も

リモート会議の相手は上海の子会社だ。

JA全農 谷山英一郎さん:
「中国国内の肥料の需給状況等を教えていただければと思います」

上海子会社:
「5月を4月末と比べると、りん安・塩化カリ・尿素、全てで値上がりしています」

JA全農 谷山英一郎さん:
「りん安については輸出規制が再び強化されるのか、見通しをお聞かせ下さい」

上海子会社:
「また引き締めるという事は、“起こりえる”と思っています」

中国の政策次第で、野菜の価格がさらに上昇する恐れがあるのだ。

エサのトウモロコシを大量買い

日本への影響は肥料だけではない。アメリカの子会社とのリモート会議でも「中国」の動きが話題の中心だ。

アメリカの子会社:
「中国国内の飼料需要は年々増加し続けています。今後1年間に中国がどれくらいの量のトウモロコシを輸入するか、今後の動きを予想しづらい状況です」

家畜や鶏のエサに使うトウモロコシが手に入りづらくなれば、肉や卵の価格に影響しかねない。

すでに「買い負け」が起きている

テレビ愛知の「激論!コロシアム」に出演した経営コンサルタントの坂口孝則さんは、すでに日本の“買い負け”が起きているという。

経営コンサルタント 坂口孝則さん:
「値段がすごく高くないと買えないと思いきや、中国がさらにもっと高いお金でせり上げてくることはよく起きている」

また国際ジャーナリストの堤未果さんは、中国のしたたかな戦略を明かす。

経営コンサルタント 坂口孝則さん:
「例えばブラジルと関係を強化するために、ブラジルの港に投資して大きくする。その分、ブラジルは中国に優先的に穀物を出す。また中国は規制が緩くて、大量に買う。だから売る方としては中国に売りたい。日本は規制が厳しく不利になっている」

食の最前線で起きているのは、輸入依存の日本を脅かす“食料争奪”の厳しい現実だ。

© テレビ愛知株式会社