サム・グッドマンは世界戦遠のく?井上尚弥の相手候補が前哨戦で払った大きな代償

Ⓒゲッティイメージズ

ウォラウトに判定勝ちも左拳を負傷

プロボクシングのIBF・WBOスーパーバンタム級1位サム・グッドマン(25=オーストラリア)が10日、オーストラリア・ウロンゴンでWBC同級8位チャイノイ・ウォラウト(27=タイ)と12回戦を行い、3-0の判定勝ちを収めた。

立ち上がりから左ジャブを突きながら距離を取って戦うグッドマンだが、試合前の段階で25勝(15KO)1分けと無敗を誇っていたウォラウトのパンチを受けるシーンもたびたびあり、ダウンシーンのないまま試合終了。ジャッジ3人の判定は117-111、117-113、119-109と中差から大差がついたが、スコアほど一方的な展開ではなかった。

無敗レコードを19戦全勝(8KO)に伸ばしたものの、グッドマンにとっては代償の方が大きい。試合後に左拳のケガが判明し、年内にも予定されていた世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)との大一番が遠のく可能性が出てきたからだ。

井上尚弥も拳のケガでフルトン戦延期

井上はルイス・ネリを倒したリング上で次戦の相手候補としてグッドマンを紹介。しかし、グッドマンは今回のウォラウト戦が決まっていたことを理由に先送りした経緯がある。

16日に発表される井上の次戦相手は元IBF同級王者テレンス・ジョン・ドヘニー(37=アイルランド)が濃厚。井上が順当に防衛すれば、12月にグッドマンが井上に挑戦すると見られていた。

しかし、左ジャブを中心に戦うボクサーにとって、左拳のケガは致命的。骨折したのかまでは不明だが、少なくとも完治するまでスパーリングもできないだろう。

井上もスティーブン・フルトン戦を控えた昨年、拳を痛めて試合を2カ月延期したことがある。ボクサーにとって唯一の「武器」である拳を痛めることは、それほど大きなアクシデントなのだ。

さらにグッドマンは試合内容でも評価を上げることができなかった。ウォラウトもタフな世界ランカーだったとはいえ、世界前哨戦としては物足りない内容。2団体でランキング1位のため、勝ちさえすれば挑戦権は失わないものの、仮に拳が万全の状態に戻っても井上尚弥に勝てるとは思えない。いずれにしても代償の方が大きい一戦となった。

アフマダリエフ戦優先の可能性も

井上はWBA(世界ボクシング協会)から元同級王者で現1位ムロジョン・アフマダリエフ(29=ウズベキスタン)と指名試合をするよう指令されている。

ドヘニー戦を強行すればベルトを剥奪されるのか、あるいは井上自ら返上するのか分からない。ただ、グッドマンが拳を負傷したことで、状況によっては12月にアフマダリエフ戦を優先する可能性も出てくるのではないか。

日本のモンスターが治めるスーパーバンタム級。4団体を統一する世界で唯一の王者だからこそ、防衛戦の相手を選ぶのもひと苦労だ。まずは16日の会見で本人が何を語るか注目しよう。



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