「好きなパパランキング」3年連続1位の男! 映画『クレヨンしんちゃん』思わず泣ける「野原ひろしの名言」

『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024

臼井儀人さん原作の漫画をもとにした国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』に登場するしんのすけの父・野原ひろしは、秋田県大仙市(旧:大曲市)出身の35歳。双葉商事営業部の係長で、野原家の大黒柱だ。

妻・みさえを愛し、長男のしんのすけと長女のひまわりと過ごす時間を大切にするその姿から、『たまひよ』の好きなパパランキング〈アニメ・漫画部門〉では3年連続1位になり2023年見事殿堂入りを果たすなど、理想のパパキャラでもある。

そんなひろしだが、映画では毎回子育て世代に刺さる名言を残すことでも知られている。そこで今回は、映画『クレヨンしんちゃん』から泣ける野原ひろしの名言を厳選して3つ紹介したい。

■「オレは家族と一緒に未来を生きる」『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』

ファンの間では、クレヨンしんちゃんの最高傑作と推す人も多い、2001年公開の『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』。

1970年に開催された大阪万博を彷彿とさせるシーンからはじまる本作は、21世紀の日本を憂い、まだ人々が心を持って生きていた20世紀への逆戻りを企てる「イエスタディ・ワンスモア」と、それを阻止しようとする野原一家の奮闘が描かれた。

物語冒頭、大人たちは“懐かしい匂い”により、まるで催眠術にかかったかのように幼児退行していく。ひろしやみさえも例外ではなく、しんのすけとひまわりがまだ部屋にいるにもかかわらず電気を消して寝てしまうシーンなどは非常に怖かった。そしてその後も、中盤まで敵の手先として動くひろしとみさえの姿が見られた。

そんなひろしは、しんのすけから自身の靴を脱がされ、その靴の匂いを嗅ぐことで我に返る。ひろしの“臭い靴の匂い”は、夫として父として“今”を懸命に生きている証であったのだ。

我に返ったひろしとみさえ、しんのすけとひまわり、そしてシロは、“懐かしい匂い”を日本中に散布を阻止しようとする「イエスタディ・ワンスモア」の計画をなんとか阻止しようとする。

「イエスタディ・ワンスモア」のリーダーであるケンの「戻る気はないか?」という最後通告に対しても、ひろしは「ない!」と即答。続けて発した「オレは家族と一緒に未来を生きる」という言葉は、本作を象徴するような名言となった。

ケンの理想とするように、“懐かしい匂い”を嗅げば20世紀という夢の中で一生幸せに暮らせたかもしれない。しかし、ひろしはそんな夢の中ではなく、家族とともに生きる未来を選んだのだった。ひろしの家族への愛が感じられる一言だった。

■「子どもが俺たちの戦うエネルギーだろ!」『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』

映画シリーズとしては初めてひろしがメインとなった、2014年公開の『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん』。

本作最大の特徴は、2人の“とーちゃん”が登場することだろう。一人目はもちろん野原ひろし、そして2人目はひろしの記憶と意識をコピーしたロボットの“ロボとーちゃん”だ。

ロボとなって帰ってきたひろし。序盤こそみさえの戸惑いもあったが、建築現場のクレーンから落ちる子どもたちを救う活躍などもあり、徐々に本物の“野原ひろし”として受け入れられていったロボとーちゃん。

しかし本物の野原ひろしは、日本の父親たちの復権を目論む組織「父ゆれ同盟」に捕らえられており、ロボとーちゃんが記憶と意識をコピーしただけのロボットだったとわかる展開は衝撃的だった。自分がコピーであることを受け入れられず、“野原ひろし”であろうとするロボとーちゃんの姿は本当に切ない。

クライマックスでは、それまで互いの存在を受け入れられなかったひろしとロボとーちゃんが手を組み、さらに野原一家のみんなで「父ゆれ同盟」黒幕・黒岩仁太郎と対決。

“巨大五木ロボット”相手に大ピンチに落ちいり、一人で戦おうとするロボとーちゃんに対してもあくまで一緒に戦おうとするしんのすけ。そしてひろしも「子どもが俺たちの戦うエネルギーだろ!」と、全国の親たちの気持ちを代弁するような一言を放つ。

その一言に何かを感じ取ったロボとーちゃん……そしてここからの大逆転へとつながる。体は機械であるロボとーちゃんも、子どもからエネルギーをもらって戦う正真正銘の親だったのだ。そしてラスト、とーちゃんとロボとーちゃんの腕相撲対決は涙なくしては見ることができない。ぜひ感動の展開をその目で確かめてみてほしい。

■「親ってのはな子どものためならなんでもできるものなのさ」『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』

『クレヨンしんちゃん』劇場映画第30作目、2022年公開の『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』。

本作は、大雨のなか病院へ急ぐひろし、生まれたばかりのしんのすけを抱くみさえと、しんのすけの誕生当日の様子が見られるファンとしても非常に貴重なシーンからはじまる。

しかし、それから5年後、この日同じ病院で子どもを産んだ屁祖隠ちよめが、病院のミスで赤ちゃんの取り違えをしてしまったと、5歳の少年・珍蔵を連れて野原家に現れる(……もちろんこれは、珍蔵を守ろうとしたちよめの嘘であった)。

その夜、野原家はちよめを連れ戻しに来た忍者たちから襲撃を受け、珍蔵と間違えられたしんのすけはちよめと一緒に忍者の里へ連れ去られてしまう。

残された珍蔵とともに忍者の里を目指す野原一家。その道中、忍者の里から送られてきた影の刺客により何度も行く手を阻まれるが、ひろしとみさえはその都度撃退。忍者の里への侵入を阻む関所でも、ひろしは“忍法おやじのくつ下大車輪”(ただの臭いくつ下のぶん回し)で難を切り抜ける。

「すごい! どうして忍法が使えるんですか?」と純粋な目で問う珍蔵に対して、ひろしは「親ってのはな 子どものためならなんでもできるもんなのさ」と答えるのだ。当たり前かもしれないが、子を持つ親なら誰しもが共感できる言葉だろう。

その後、無事にしんのすけと再会を果たしたひろしとみさえ。両親に抱かれ、嬉しさから珍しく涙を流すしんのすけの姿も印象的なシーンだった。

今回は、映画『クレヨンしんちゃん』泣ける野原ひろしの名言を紹介した。いずれも親なら誰しもが共感できる飾らないとても自然な一言であり、だからこそ、ひろしの言葉は人々の心に刺さるのだろう。
アニメがはじまった当初、筆者はしんのすけに近い年であった。現在ではひろしよりも年上となってしまった。そういった意味で、今回のひろしの名言も当時とはまた違った印象を受けた。

今年8月9日には劇場版31作目となる『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』が公開される。本作でもひろしの名言は飛び出すのだろうか。大人になり長く『クレヨンしんちゃん』映画から離れてしまった人も、この機会にぜひ見返してみてほしい。

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